「まず触ってみる」から広がるフィジカルAIの可能性——リョーサン菱洋・理経との技術者座談会に参加しました

「まず触ってみる」から広がるフィジカルAIの可能性——リョーサン菱洋・理経との技術者座談会に参加しました

フィジカルAI エンジニアクロストークの集合写真と対談風景

株式会社アマテックの代表取締役・天野良祐が、リョーサン菱洋株式会社・株式会社理経との「フィジカルAI エンジニアクロストーク」に参加しました。

会場は、ロボットや関連機器が並ぶリョーサン菱洋のフィジカルAIショールーム。進行を務める中島氏、理経の九冨氏、そして天野が、これまでの共同展示を振り返りながら、開発の苦労やお客様の反応、これから挑戦したいことを語り合いました。

話題は、シミュレーションと実機をつなぐSim-to-Realから、展示会での思わぬトラブル、学生・若手エンジニアへのメッセージまで。「そうでしたね」「それはやってみたいですね」と応じ合うやり取りからは、実際に一緒に手を動かしてきた3社ならではの距離感が伝わる座談会となりました。

※発言は、趣旨を変えない範囲で言いよどみや重複を整理し、一部抜粋しています。

「何か一緒にできたら」から始まった、3社の取り組み

最初の話題は、3社が一緒に取り組むことになったきっかけです。

中島氏「理経さんの方と一緒に会話して、今後何かできたらというところがきっかけになりました。その後の国際ロボット展に向けて、何か一緒にやらせていただけないかと相談させていただいて」

展示会での出会いを起点に、仮想空間だけでなく、実際のロボットも動かすデモを作ろうという話が進んでいきました。そこで、実機側の制御を担うパートナーとして声が掛かったのがアマテックです。

九冨氏「我々もシミュレーションばかりやっていたので、実機ロボットを動かすところはなかなか難しいなというところで、名古屋で活躍されている天野さんにお声掛けして」

九冨氏「まずは取っ掛かりとして、実機と連携するSim-to-Realをやってみようというのが最初でしたね」

ロボットや関連機器を扱うリョーサン菱洋、CG・シミュレーションに強みを持つ理経、そして実機の制御に取り組むアマテック。それぞれの得意分野がつながり、共同でのデモ開発が始まりました。

当時の動画を見ながら「懐かしいですね」と振り返る場面も。成果だけを紹介するのではなく、声を掛け合い、試しながら形にしていった経緯を共有するところから、座談会は始まりました。

ショールームでロボットを囲むクロストークの登壇者3名

「2台でも動くはず」。実際に試して見えてきた課題

共同展示は、1台のロボットを動かすデモから、2台を同時に動かす取り組みへと発展しました。

九冨氏「Jetsonを2台デスクトップにつなげば複数台の制御ができるんじゃないかということが分かりまして、実際に実装してみようとなって」

動画に映る2台のロボットを見ながら、中島氏が天野に問い掛けます。

中島氏「天野さん、ここら辺は、2台になると1台と違って苦労が結構あった感じですか?」

天野「論理的な想定では、2台でも3台でも4台でも同じように動くんだろうなというのは分かっていたんですけど。実際にやってみると、実機は動くんだけど、シミュレーション側がちょっと重くて、ゆっくり動いていたりとか」

仕組みとして成立することと、展示の場でスムーズに動かすこと。その間には、実際に試して初めて分かる課題があります。台数を増やしたことで見えた処理の負荷や動きの違いも、3人にとっては次の改善につながる経験でした。

一方で、実機が動く展示だからこそ伝わった手応えもありました。

九冨氏「まだIsaac Simというのも目新しいですし、そこから実機のロボットを動かせているという事例も、まだまだ日本だと少ないので、かなりインパクトはあったと思いますね」

中島氏「それを実機に持っていくというのを見せられた。しかも2台というのがよかったですね」

画面の中で動いているものが、目の前のロボットの動きにつながる。その様子を来場者に見てもらえたことが、3社にとって共通の手応えとなっていました。

「事前には動いていたのに」。展示会ならではの舞台裏

技術の話が続く中、話題は展示会の裏側へ。中島氏の問い掛けには、現場を経験してきた技術者ならではの実感がにじみます。

中島氏「展示会あるあるですけど、なぜか展示会になると動かないということがあるんですが」

九冨氏「3人で御茶ノ水で一緒に動かしていた時はきれいに動いていたのに、いざ本番になると動かないということはよくあることで」

準備の段階では問題なく動いていても、会場では思った通りにいかない。そんな場面で九冨氏が挙げたのは、シミュレーションを使った展示ならではの工夫でした。

九冨氏「実機が動かなくなったらシミュレーションだけを動かして見てもらうということもできますし、シミュレーションならでは『こういうこともできますよ』と言えるところが、いいところかなと思いますね」

中島氏「それはいいですね。確かに」

実機が止まった時にも、取り組みの狙いや可能性を伝えられるようにしておく。見せ方の工夫にうなずきながら、天野は制御側で意識した点を紹介しました。

天野「一番今回の展示会で訴求したかったところが、シミュレーションからリアルに動いているところをお客さんに見てほしかった、というところなので」

そのために重点を置いたのが、想定外の状況でもロボットが不適切な動きをしないようにする、フェールセーフを意識した制御です。見せたい動きを実現することに加えて、うまくいかない時にどう備えるかも、実機を扱う上で欠かせないテーマになりました。

展示会では、照明などの環境の違いや、長時間動かし続けることで見えてくる課題もあります。準備中の確認だけでは分からないことを本番で経験し、それを次の展示や開発に持ち帰る。互いの苦労を共有するやり取りから、試行錯誤を積み重ねてきた様子が伝わってきました。

カメラや照明、モニターを配置して行われたクロストークの撮影風景

「フィジカルAIをやりたい。でも何から?」に向き合う

展示会をきっかけに寄せられる相談についても、3社それぞれの立場から話が広がりました。

九冨氏「インフラ系とか製造業のお客様にお声掛けいただいていて、いろいろ人間がやっているところを自動化したいという声が多いです」

最終的には実際のロボットを動かしたい。その一方で、まずはシミュレーションの中で試したいという相談もあるといいます。天野からは、愛知県の企業とのやり取りが紹介されました。

天野「自動車系の会社さんが多いです。今だとフィジカルAIに取り組みたいんだけど、どうしたらいいの、という問い合わせがやっぱり多い感じですね」

予算や新しいチームの検討が進んでいても、具体的に何から始め、どの工程に適用するかは、これから考えるという企業もあります。そこで天野が大切にしているのは、まず動く様子を見てもらい、現場での使い方を一緒に考えていくことです。

Isaac Labを使った強化学習によってロボットがシミュレーション上で動く様子を示し、そこから工場のラインへの適用につなげていく。その説明に、中島氏が応じます。

中島氏「そこでSim-to-Realがまた効いてくるわけですね」

天野「そうです。あくまでもシミュレーター上では終わらないよ、というところが今回は言えるのかなという感じですね」

また、中島氏からは、導入する技術を見極めることの大切さにも話が及びました。

中島氏「『フィジカルAIはやりたいんだけど』という相談が来るんですけど、実はまだまだ協働ロボットとか産業ロボットでできるような相談も結構あるんですよね」

九冨氏「いろいろ組み合わせて提案するのが良さそうですね」

新しい技術への期待を持ちながら、既存の技術も組み合わせて、お客様に合った方法を探していく。開発の可能性と導入現場の現実を、両方見ている3人らしいやり取りでした。

目の前のロボットから、次に試したいことが広がる

座談会では、今後取り組みたい技術についても意見が交わされました。

九冨氏が紹介したのは、周囲の環境をデータ化し、シミュレーションに取り込む取り組みです。3D Gaussian Splattingの話から、中島氏の関心は、いま座談会を行っているショールームへと向かいました。

中島氏「じゃあ、この展示場とかもデータを取って、そこにこのヒューマノイドを動かすというのも?」

九冨氏「はい、もちろんできます」

中島氏「なるほど、ちょっとそれやってみたいですね」

目の前の場所やロボットをきっかけに、その場で次のアイデアが生まれる。技術の説明が、すぐに「一緒に何を試せるか」という話につながるのも、今回の座談会の印象的な場面でした。

5本指のロボットハンドについては、人間の作業を教える際の可能性や、握る力の調整、現場で必要とされる用途へと議論が広がりました。

九冨氏「人間の仕事を代わりにやってもらうとすると、人間と同じ形をした5本の指の作業が、一番教えるところも効率的なのかなと思うんです」

天野「例えば今後、ロボットがロボットを修理するような時代が来ると思っていまして、工具をいろいろ持ち替える時に便利なのかな、だったりとか」

一方で、現時点ではグリッパーでも対応できる作業が多いという話も。未来の用途を想像する楽しさと、いま現場で求められていることを見極める視点が、自然に行き交っていました。

身ぶりを交えて話す九冨氏と、話に耳を傾ける登壇者

学生・若手エンジニアへ。「動いた」「できた」を積み重ねてほしい

これからフィジカルAIに取り組む学生や若手エンジニアに向けた話題では、3人が大切にしている姿勢が見えてきました。

中島氏が挙げたのは、まず興味を持つこと、そして人と人とのコミュニケーション。その言葉を受け、九冨氏はこう続けます。

九冨氏「新しいことに挑戦しようという気持ちが、やっぱりまずは大事なのかなとは思うんですけど」

学び方の例として挙がったのは、認定試験への挑戦や、技術イベントのセッションを通じた情報収集でした。多くの人が見る情報だけでなく、まだあまり注目されていない話題に触れておくことも、自分の知識や会話のきっかけになります。

天野が紹介したのは、アマテックの考え方と、インターン生との日々のやり取りです。

天野「うちのそもそもの考え方が、ワクワクすることを仕事にしたい、というところなんですね」

新しいロボットが登場した時に、どうすれば扱えるようになるのかを調べ、試してみる。その探究心を大切にしてほしいと話しました。

情報が多く、整理するだけでも時間がかかる中で、最初から答えを渡すのではなく、進むための筋道を示す。そうして学生が自分でIsaac Labを使い、強化学習に取り組み、ロボットが動いたと喜ぶ様子を、天野も楽しみながら見守っているといいます。

中島氏「やっぱり成功体験というのが。そういうのをやると自分の成長も感じますし」

天野「試行錯誤して、やっぱり成功体験ですね。『動いた』『できた』というところを、どんどん積み重ねていっていただきたい」

天野「実際に触ってみないと分からないところがいっぱいあると思うので。それはロボットでもソフトでも全部一緒なのかなと思っています」

知識を集めるだけで終わらず、自分で触って、小さな成功を重ねていく。共同展示で試行錯誤してきた3人の話と、若い世代へのメッセージがつながる時間となりました。

会社の垣根を越えて話すことが、次の挑戦につながる

締めくくりには、技術者同士が直接会い、話すことの価値にも話が及びました。

九冨氏「技術者は孤独に頑張っている人が多いので、ロボット勉強会とかに行くと、ワーッと話が盛り上がったりとか。それも楽しいところですよね」

中島氏「同じ会社のメンバーだったり、それが他の会社さんになると、それぞれの社風とかも出てくると思うので、こういった機会はいいかなと思います」

技術的な成果だけでなく、うまくいかなかった経験や、次に試したいアイデアまで共有できること。今回のクロストークは、3社の取り組みを振り返ると同時に、新しい挑戦につながる会話の場でもありました。

アマテックは今後も、パートナー企業との協業を通じて、シミュレーションと実機をつなぐ技術の検証・開発に取り組んでまいります。また、こうした交流や情報共有の機会を大切にしながら、フィジカルAIを現場で活用するための可能性を広げていきます。

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